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「P&Gマフィア」と呼ばれることもあるP&Gのマーケティング部門。経営戦略としてマーケティングを重視し、市場に圧倒的なシェアを誇るP&Gでは、普段どのようなことが議論されているのでしょうか? 重要キーワードからP&G流市場の見方を知っていきましょう。

「P&Gマフィア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「マフィア」と言われると何やら恐ろしげな印象がありますが、これは実は褒め言葉なのです。マーケティング戦略に非常に強い集団という意味で、P&Gのマーケティング部門をこう呼びます。本記事では、P&Gのマーケティング部門ではどのようなことが考えられているのかを、キーワードをもとに解説していきます。

P&Gのマーケティング部門

日本国内では「外資系」のくくりで考えられることの多いP&Gですが、その立ち位置はドメスティック / グローバルの範囲を超えて独特です。まずはP&Gのマーケティング部門で何をやっているのかを見ていきましょう。

ブランドづくり

日本語で「マーケティング」と言ったときに想定される業務に近いのがブランドづくりです。商品開発の段階から携わり、広告やその他のプロモーションをコントロールすることで商品そのもののブランド認知を作り上げていきます。

ブランド経営

P&Gでは、マーケティングを経営の根幹とみなしています。つまり、マーケティングを行うということは経営を行うこととほぼ同義になっているのです。

そのため、マーケティング担当者は経営的な目線から自分の業務を検討する訓練ができます。マーケティング経験者はP&G社内の経営層に昇進することも多く、キャリアとしては花形と言えます。また、P&Gを離れて他企業の経営層になったり、マーケティングのプロとして独立したりする人も少なくありません。

人材育成

外資系は仕事の裁量権が大きい一方、「できる」前提で採用されるため大変……。そんな印象もあるかもしれません。P&Gのマーケティング部門は、実は経験の有無を問わずに採用しています。社内公用語が英語であるため英語力は必要ですが、それ以外の能力は仕事をしながら身につけていくことができますし、会社として積極的に育成していく準備があることを公言しています。

特徴的なフレームワークや評価軸が知りたい!

P&Gがマーケティングを非常に重要視していることまでは分かりました。それでは、なぜP&Gのマーケティングはそこまで優れていると言われているのでしょうか? P&G経験者がポイントとして紹介したことのあるキーワードをもとに考えていきましょう。

Jobは何か?

商品にとって最も大切なのは、「その商品のJobは何か」なのだと言います。「Job」とは直訳すると「仕事」です。もう少し分かりやすく言うと、「商品に課せられた使命・解決するべき課題」のことです。

商品開発をしていると、「他社のAという商品がヒットしている。だからBという類似商品を出そう」となることがあります。このときに留意したいのが「Jobは何か」です。

Aは消費者のJobを解決したのでヒット商品になっている可能性が高いのです。では、類似品として後発するBは、一体どのようなJobを追加で解決できるのでしょうか? すでに出回っている商品で考えてみるとおもしろいかもしれません。

ポジショニング(WWH)

ポジショニングというキーワードはマーケティングの世界では目新しいものではありません。STP分析(セグメンテーション・ターゲット・ポジショニング)というフレームワークに触れたことがある人も多いのではないでしょうか。

P&Gでは、ポジショニングをそこからさらに細分化して考えます。具体的なポイントは「WHO(誰に)・WHAT(何を)・HOW(どうやって)」です。これを略して「WWH」と言います。

WHO、つまりターゲットが誰かを明確にすると、WHAT(解決するべきJob)やHOW(どうやってJobを解決するか)も明確になります。それらがはっきりするところまで戦略を煮詰めるのがP&G流のやり方だそうです。

リフレーミング

リフレーミングとは、「別の見方を持つこと」です。よく使われる言い回しでは「コップの水を『半分しか入っていない』と言うか、『まだ半分も残っている』と言うか」というものがあります。

上記は単純なリフレーミングの例ですが、ほかにもコップの水を説明する方法はあります。「カロリーのないもの」「H2O」「無色透明」「液体」など、少し考えるだけで色々思いつくのではないでしょうか。

このように様々な視点で物事を見ることができるようになると、違いや特徴に気がつきやすくなります。その違いこそがまだ気づかれていないJobを解決するきっかけになるかもしれないのです。

リフレーミングは以下の書籍でも紹介されています。

マーケティング・リフレーミング — 視点が変わると価値が生まれる | 栗木 契, 水越 康介, 吉田 満梨 |本 | 通販 | Amazon

SMAC

Jobが判明し、企画の内容が固まってくると、今度はそれを具体的な販売計画に落とし込んでいく必要が出てきます。P&Gでは目標設定に「SMAC」というフレームワークを使います。「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Consistent(一貫性がある)」の頭文字です。

目標は「何となくお客さんが増えた」「評判が良い」といった曖昧なものではなく、具体的で測定可能である必要があります(Specific / Measurable)。「○ヶ月で●パーセント売上アップ」などです。かつ、実現可能である必要があります。従業員に無理なノルマを課すような目標は適切ではないということです(Achievable)。最後に、その目標が自社の理念やこれまでの方針とそぐわないものではないかを確認しましょう(Consistent)。

SMACについてはこちらの書籍でも詳しく紹介されています。

なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる― | 音部大輔 |本 | 通販 | Amazon

5A

「5A」とは、フィリップ・コトラーが「マーケティング4.0」の一環として提唱したカスタマージャーニーです。「認知(Aware)」「訴求(Appeal)」「調査(Ask)」「行動(Act)」「奨励(Advocate)」の5つのAからなります。

インターネットが普及した時代背景を前提に、顧客が商品やブランドを知るところ(Aware)から、実際に購入して(Act)他の人に勧めるところ(Advocate)までを目指します。

5Aやマーケティング4.0は以下の書籍に詳しく解説されています。

コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則 | フィリップ・コトラー, ヘルマワン・カルタジャヤ, イワン・セティアワン, 恩藏直人, 藤井清美 |本 | 通販 | Amazon

トリプルメディア

商品プロモーションにはメディア露出が欠かせません。P&Gでもメディアの種類を3つに分けて、目的別に活用しています。

メディアはおおよそ「ペイド(Paid):料金を払って掲出する媒体」「オウンド(Ownd):自社で所有している媒体」「アーンドもしくはシェアド(Earned / Shared):プラットフォームを利用するタイプの媒体」に分かれ、それぞれに届きやすいターゲットや効果が異なります。

トリプルメディアについてはこちらのブログでも詳しく紹介しています。

トリプルメディアって何?デジタルメディアを分類して活用しよう | misosil

まとめ

P&Gのマーケティングについて語られるときにしばしば出てくる重要キーワードについて解説しました。マーケティングの雄が普段どのようなことを考えているのかを知ると、自社の業務にも役立てられる点が見つかるのではないでしょうか。ぜひ活用してみてください。

参考:

About Marketing | Marketing | P&G 既卒者採用

【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書|石井|note

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