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「Z世代へのマーケティング施策としてBeRealを使いたいが、危険性はないのか」と社内で聞かれた際、感覚的な印象だけで答えるのは避けたい。BeRealは加工なし・フィルターなしという設計思想を貫くSNSであり、その特性自体が企業にとってのリスクの発生源になっている。本記事では、位置情報の扱い、投稿タイミングが読めない設計、加工不可という制約下での炎上リスク、そして利用規約上企業が押さえておくべき点を、公式情報をもとに整理する。結論から言えば、BeReal自体が「危険なアプリ」というより、リアルタイム性・非加工性という仕様を理解しないまま運用を始めることがリスクの本体だ。

BeRealを企業が使うときに想定される3つのリスクを整理した図解
図解:BeReal運用で想定される3つのリスク

BeRealとは何か、まず前提を確認する

BeRealは、フランス・パリを拠点とするBeReal SAS(設立2020年1月)が展開する写真共有SNSだ。基本的な仕組みや若年層に支持される理由については、当ブログの「新時代のSNSアプリ「BeReal」とは?Z世代の若者がSNSに求めていること」で解説済みのため、本記事では重複を避け、企業がマーケティング活用を検討する際の「危険性」判断に絞って掘り下げる。

BeRealが若年層に支持される背景には、加工・フィルターなしで「今この瞬間」を共有するという設計がある。2026年7月27日付のBeReal SASプレスリリースでは、日本国内の月間アクティブユーザー数(MAU)が650万人を突破したと発表されており(出典:後掲)、Z世代向けチャネルとしての存在感は増している。

リスク①位置情報――「友達限定だから安全」とは限らない仕組み

BeRealでは投稿のたびに位置情報を共有するかどうかを選択できる。共有をオンにすると、経度・緯度単位の精度で位置情報が投稿の閲覧者に伝わる仕組みになっている。この点はBeReal公式のプライバシーポリシーでも説明されている。公開範囲を「友達のみ」に設定していても、位置情報が投稿に付随して共有される点は変わらない。

企業の公式アカウント運用という文脈では、位置情報の共有そのものより、運用担当者個人のアカウントが企業と紐づけて特定されるリスクの方が実務上は大きい。BeRealは個人の連絡先ベースで友達がつながる設計のため、私物スマホで担当者が個人アカウントと企業アカウントを行き来していると、投稿の背景から社内の様子や勤務先が推測される可能性がある。運用開始前に、公式アカウント専用の端末を用意するか、少なくとも個人アカウントの位置情報設定を確認しておく必要がある。

リスク②投稿タイミングが読めない――1日1回ランダム通知・2分以内という制約

BeRealの通知は1日1回、ランダムなタイミングで届き、ユーザーは通知から2分以内に前面・背面カメラで同時撮影して投稿する仕組みになっている。これは一般ユーザーだけの制約ではない。BeReal公式サイトが2024年1月24日に公開した発表によれば、著名人やブランドの公式アカウント「RealPeople and RealBrands」も2024年2月6日の提供開始時点から同じ制約下に置かれており、日本向けのプレスリリース(2024年2月7日配信)でも「公式アカウント保持者は、他のユーザーと同じように、不定期に届く通知から2分以内に投稿する」と明記されている。

つまり、InstagramやXのように「投稿日時を予約する」「担当者の空き時間に合わせて投稿する」という運用が、BeRealの公式アカウントでは原則としてできない。通知が会議中や休日に届く可能性もあり、投稿担当者が常時対応できる体制を組むか、投稿を逃すリスクを許容するかを事前に決めておく必要がある。

リスク③加工不可・撮り直し不可という設計が生む炎上リスク

BeReal広告のクリエイティブガイドラインでも「Ads on BeReal should follow the same constraints as organic content(BeReal上の広告は、通常の投稿と同じ制約に従う必要がある)」と明記されており、テキストオーバーレイや過度に作り込んだビジュアルは推奨されていない。加工前提のクリエイティブ運用に慣れた担当者ほど、「盛れない」制約に戸惑いやすい。

この制約は諸刃の剣で、演出できない分、投稿ミス(社内資料や顧客情報の写り込み、不適切な表情・発言の映り込みなど)がそのまま公開されやすい。BeRealのコミュニティ規定(最終更新2023年4月24日)では、いじめ・ハラスメント、ヘイトコンテンツ、他者の非公開個人情報の無断共有などを禁止事項として明記しており、利用規約(最終更新2026年6月30日)では、規約違反コンテンツの共有に対して「3回ルール」(1回目の違反で30日間のアカウント停止、3回目で永久停止)を適用すると定めている。加工し直す猶予がないBeRealでは、この種の投稿ミスを事後に「なかったこと」にする手段が乏しい点を運用前提として理解しておく必要がある。

企業が確認すべき利用規約上のポイント――投稿コンテンツの権利はどうなるか

「BeRealに投稿した写真は30年間自由に使われる」という説明がSNSリスク系の記事で広く流通しているが、2026年6月30日最終更新の利用規約を確認する限り、「30年」という具体的な年数を定めた条項は見当たらない。誤情報をそのまま企業説明に使うと、かえって信頼を損ねかねないため、ここでは規約の原文に基づいて正確に整理する。

BeRealの規約は、投稿コンテンツを「Friends-only Content(友達限定コンテンツ)」と「Globally Shared Content(全世界に公開したコンテンツ)」の2種類に分けている。Friends-only Contentは、ユーザーが任意でBeRealへの利用許諾を与えない限り、コミュニケーション・商用・マーケティング目的での利用はされない。一方、Globally Shared Contentについては、ユーザーはサービス利用の対価として、BeRealに対し「世界的、非独占的、ロイヤリティフリーかつサブライセンス可能な、複製・加工・改変・公開・配信を含む利用許諾」を自動的に付与する規定になっている。利用期間についての明記はないが、原則として無期限に近い形で利用され得る点は、企業アカウントの担当者だけでなく、企業アカウントに関連してユーザーが投稿するUGC(タグ付けなど)を扱ううえでも押さえておきたい。

企業アカウントの2つの入口――「RealBrands」公式アカウントと「BeRealz」コミュニティ

企業がBeRealと接点を持つ手段は、現時点で大きく3つに整理できる。1つ目は2024年2月6日開始の公式アカウント機能「RealBrands」(著名人向けは「RealPeople」)、2つ目は2026年7月27日発足の企業向けリサーチコミュニティ「BeRealz」、3つ目はBeReal Adsによる広告出稿だ。それぞれ目的とリスクの所在が異なるため混同しないようにしたい。

RealBrandsは前述の通り、他の一般ユーザーと同じ「2分以内・加工なし」の投稿制約を受ける、いわば“素の運用チャネル”だ。一方、BeRealzはコンテンツ投稿の場ではなく、高校生・大学生を中心としたBeRealユーザーへのアンケートや座談会を通じて、企業が施策の材料となる声を集めるためのリサーチ用コミュニティで、参加には「ads@bereal.com」への問い合わせと選定が必要になる(詳細は当ブログの「BeReal新コミュニティ「BeRealz」とは?企業のZ世代マーケティング活用法を解説」を参照)。「BeRealで何かやりたい」と考えたときに、まずどちらの入口を使うべきかを整理しておかないと、社内の期待値がずれたまま進めてしまいやすい。

【運用者視点】“危険だから使わない”ではなく“制約を前提にした運用フローを先に設計する”という判断軸

ここまで見てきたリスクは、いずれも「BeRealが悪意を持って危険な設計をしている」というより、「加工なし・即時性」というBeRealのコンセプトそのものから生じる副作用だ。したがって、企業側の判断軸は「危険だから避ける」ではなく「制約を前提にした運用フローを、投稿を始める前に用意できるか」に置くべきだと考える。

具体的には、(1)通知にいつでも対応できる担当者・体制を確保できるか、(2)投稿前チェックの猶予がほぼゼロという前提で、映り込みリスクのある場所(会議室・在庫棚・顧客対応スペースなど)を投稿禁止エリアとして事前に決められるか、(3)炎上や規約違反時の削除・報告フロー(コミュニティ規定の報告窓口経由)をあらかじめ確認できているか、の3点を投稿開始前に社内で合意できるかどうかが、実質的な導入可否の分かれ目になる。この3点をクリアできないまま「若年層に人気だから」という理由だけで始めると、リスクだけが顕在化しやすい。逆にクリアできるなら、Instagramの加工文化に疲れたZ世代に対して、他社と差別化された“素の”接点を持てるチャネルとして機能する可能性がある。若年層マーケティング全体の設計については「若年層マーケティングとは?ポイントや成功事例も紹介」でも整理しているので、BeReal単体の是非を判断する前に、自社のターゲットとBeRealの主要ユーザー層(10代後半〜20代前半)が重なっているかどうかも確認しておきたい。

BeRealは危険だから避けるべきか?企業が導入前に確認したいチェックリスト

  • 自社ターゲット層とBeRealの主要ユーザー層(10代後半〜20代前半中心)が重なっているか
  • 通知後2分以内に対応できる担当者・当番体制を用意できるか
  • 投稿禁止エリア・映り込み厳禁の情報(顧客情報・社内資料・取引先情報など)を事前にリスト化できているか
  • 個人アカウントと公式アカウントの運用端末・位置情報設定を分離できているか
  • 規約違反時の3回ルール(30日停止→永久停止)や炎上時の報告フローを担当者が理解しているか
  • 投稿コンテンツの利用許諾範囲(Globally Shared Contentの扱い)を社内の法務・広報が確認済みか

これらに答えられない項目が多いほど、現時点での本格導入は時期尚早と判断してよい。逆にすべて整理できているなら、BeRealは「危険だから触れない」対象ではなく、リスクを織り込んだうえで検討に値するチャネルだ。

BeRealの危険性に関するよくある質問

Q. BeRealの公式アカウントも一般ユーザーと同じ通知タイミングなのか?
A. 2024年2月6日に提供開始された「RealPeople and RealBrands」は、一般ユーザーと同じくランダムな通知から2分以内に投稿する制約を受ける(2024年2月7日配信のBeReal SASプレスリリースより)。企業だけ投稿を予約できる仕組みは確認できていない。

Q. 投稿した写真は本当に30年間自由に使われるのか?
A. 2026年6月30日最終更新の利用規約を確認した限り、「30年」という具体的な年数を定めた条文は見当たらない。全世界に公開したコンテンツについては、期間の定めなくBeRealへ利用許諾を与える規定になっている点は事実であり、「無期限に近い形で利用され得る」という理解が実態に近い。

Q. 位置情報を必ずオンにしないと投稿できないのか?
A. 位置情報の共有は投稿のたびに選択でき、オフのままでも投稿自体は可能とされている。ただしオンにした場合は経度・緯度単位の精度で共有される点に注意したい。

Q. BeRealzとRealBrandsはどちらから始めればよいのか?
A. 目的による。日常的な発信・ファンとの接点作りが目的ならRealBrands(公式アカウント)、施策前のリサーチやユーザーの本音把握が目的ならBeRealzが適している。両者は併用も可能な別サービスだ。

まとめ

BeRealの「危険性」は、位置情報の扱い、通知タイミングの予測不能性、加工・撮り直しができない設計という3つの仕様に集約される。これらはBeRealが意図的に持たせている特徴であり、裏を返せば「素の接点」を作れる数少ないチャネルでもある。企業として重要なのは、危険性の有無を白黒で判断することではなく、通知対応体制・投稿禁止エリアの設定・規約違反時の対応フローという3点を投稿開始前に整えられるかどうかだ。運用を検討する際は、RealBrands(公式アカウント)とBeRealz(リサーチコミュニティ)という2つの入口の違いも踏まえたうえで、自社の目的に合った形を選びたい。

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