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ユーザーのプライバシー保護を強化するiOS14の発表に伴い、新しいトラッキングソリューション「SKAdNetwork」が取り上げられています。

これまでの広告計測(adjustやAppsFlyer)とどう違うのでしょうか。

「SKAdNetwork」でできることや制限などを解説していきます。

1.SKAdNetworkとは

SKAdNetworkとは、AppleがiOS/iPadOS/tvOSのアプリデベロッパー向けに提供する、広告効果を計測するためのソリューションです。ユーザーの同意なしに端末を特定するデータを使用せず、プライバシー保護を重視したものとなっています。

Appleが発表したのは2018年ですが、当時はそれほど話題になりませんでした。では、なぜ今になって話題になっているのでしょうか。

その背景には、AppleがiOS‐14.5のアップデート時にアプリデベロッパーに向けて対応必須としたATT(AppTrackingTransparency)があります。

ATTフレームワークによって、ユーザーデータの取得はATTポップアップでオプトインしたユーザーのみに制限されました。つまり、端末が特定できる広告ID (IDFA)を使用した計測がユーザーの同意なしにできなくなったのです。そのため、この計測方法が注目され始めているというわけです。

Appleが今後もSKAdNetworkの開発に注力して、定期的なバージョンアップを行い、iOS/iPadOS/tvOSでの広告効果計測のシェアが増え続けるようであれば、SKAdNetworkもATTと同様に、対応必須の項目になるかもしれません。

2.なぜSKAdNetworkが必要になったのか

2021年以降に搭載されることが決まっているATT(App Tracking Transparency)の影響です。ATT(App Tracking Transparency)とは、ユーザーのプライバシーに配慮したフレームワークです。

具体的には、IDFAを取得する際にはユーザーの許可を求めることが必要になりました。

これまでIDFAはユーザーが設定で取得拒否をしていなければ、許可を取らずに取得が可能でしたが、今後は許可が必要になったため、取得がかなり困難になると予想されています。

取得が困難になると、IDFAを活用しインストールのトラッキングを行っていたものができなくなり、どの媒体から誰がインストールしたのか追うことができなくなります。

(フィンガープリントが補完するため、まったくできなくなるわけではなく、精度がかわる)

そういった背景から「SKAdNetwork」では、IDFAが取得できなくてもトラッキングできるツールのため、広告配信事業者やデベロッパーが対応に取り組み始めているのです。

3.SKAdNetworkの仕組み

では、どのようにして広告効果の計測が行われるのか見ていきましょう。

まず、広告配信ネットワークはキャンペーンを識別するため、署名付きのパラメータを広告に埋め込みます。その広告をユーザーがクリックし、アプリをインストールします。

そして、ユーザーがアプリを起動すると、コンバージョン(以下、CV)情報を送信するための24時間タイマーがスタートします。

このタイマーは、アプリ内に予め設定されたCVイベントをユーザーが経由する度にリセットされ、再びスタートします。そしてユーザーがそれらのイベントを経由する度に、数値が上昇する仕組みになっており、この数値をConversionValueと呼びます。

ユーザーがCVイベントを経由しない状態が24時間以上続くと、ConversionValueが更新されずにタイマーが切れます。タイマーが切れてからランダムなタイミングで(0~24時間以内)、ポストバックが1度だけ広告配信ネットワークに送られ、広告の効果計測ができる仕組みになっています。

もう少し具体的に例をあげて説明してみます。

チュートリアル完了後に課金ができるゲームアプリ『NEND QUEST』があるとします。

アドネットワークnendが『NEND QUEST』の広告をマンガアプリに配信しました。

すると以下のような流れで効果計測がされます。

―広告配信後―

・ユーザーAさんが広告をクリック

・表示されたApp Storeページから『NEND QUEST』をインストールして起動

・ConversionValueの値『0』が記録される

・24時間タイマーがスタート

―10分後―

・Aさんがチュートリアルを完了

・ConversionValueの値『1』が記録される

・10分動いていた24時間タイマーはリセット、再度スタート

―20分後―

・Aさんは1,200円の課金をする

・ConversionValueの値『2』が記録される

・20分動いていた24時間タイマーはリセット、再度スタート

・課金後しばらく遊んだAさんは、ゲームを閉じる

―24時間後―

・先ほど再スタートされた24時間タイマーは時間切れ

―〇時間後―

・nendにポストバックが返され、管理画面上にCVが計上される

※ポストバックはタイマーが切れてからランダムなタイミング (0~24時間) で送られてくる

この例ではインストールから10分後にチュートリアル完了、20分後に1,200円の課金、その後にConversionValueの値は上昇しなかったので、タイマーが切れた時間はインストールしてから24時間30分後になります。

そのため、nendがAppleからポストバックを得ることができるのは最短で24時間30分後、最長で48時間30分後ということになります。

この情報伝達のラグもユーザーを特定させないためのSKAdNetworkの大きな特徴のひとつと言えます。

4.SKAdNetworkの基本ポイント

最低限知っておいた方がいいポイントを絞って解説します。

4-1.計測範囲は限定的

SKアドネットワークで計測できる範囲はプライバシーに配慮した思想のため、極めて限定的です。

「どの媒体からインストールが発生したか」は把握することができますが、誰がインストールしたかは把握できません。また、インストール後の継続率や課金額などの指標は実質追えません。

4-2.SKAdNetworkが利用できるのは一部

SKAdNetwork、広告を掲載する媒体が「アプリ」に限定されます。WEBサイトの場合はSKAdNetworkを活用してトラッキングすることはできません。

また、アドネットワークによっては、対応していないところも多く存在します。

4-3.広告主は簡単に利用できる

広告計測SDKを導入していれば、広告主は簡単に利用が可能です。

基本的にはSDKの管理画面から必要な設定をすれば完了です。SDKではSKアドネットワーク経由のインストールもレポートで確認することができます。

4-4.長期的には普及するが、いまは対応不要?

広告主目線で考えると、SKAdNetworkは現状マーケティングツールとしては使えるものではなく、積極的に使う必要はないのではないかと思われます。

配信する媒体やアドネットワークがSKAdNetworkしか対応しない、または推奨するケースも出てくると思われます。そういう場合は柔軟に対応するといった方針で良いかもしれません。

ただ、アップルが提供するSKAdNetworkの仕様変更やフィンガープリントの制限などが今後予想されますので、プライバシーに配慮したSKAdNetworkの活用は徐々に高まってくると思われます。

5.まとめ

SKAdNetworkの基本ポイントを解説しましたが、もし詳細な情報を得たい場合は広告計測SDKが発信している記事やセミナーに参加することがおすすめです。

比較的最新の情報を発信しており、かつ広告主にはどういった影響や対策が必要なのかを詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

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