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YouTubeは2026年8月19日、動画詳細ページにある「Copyright(著作権)」メニューの名称を「Claims」に変更し、Content IDによる著作権申し立てとAIによる「なりすまし(類似性)」申し立てを1つの表示にまとめると発表した。発表はYouTube Help CenterのコミュニティフォーラムでTeamYouTubeのRob氏がGoogle社員として投稿し、「Announcement(告知)」タグが付けられている。海外マーケティングメディアPPC Landが2026年8月21日付で報じた内容によると、この投稿には「Content IDの著作権申し立てで動画に制限がかかった場合も、プライバシーに基づくAIなりすまし申し立てで制限がかかった場合も、今後はこの広い『Claims』タブの下にまとめて表示される」という趣旨の説明が記載されている。あわせて、なりすまし申し立てに異議を申し立てる際の理由が4分類に整理されたことも明らかになった。ポリシーそのものの変更ではなく表示の整理が主眼だが、企業アカウントの運用担当者にとっては申し立て対応の手順が変わる実務的な変更にあたる。

何が変わったのか:「Claims」タブへの統合

これまでYouTube Studioの動画詳細ページでは、著作権に関する制限は「Copyright」というメニュー名で表示されていた。今回の変更によりこの名称が「Claims」に変わり、次の2種類の申し立てが同じタブの下に表示されるようになる。

  • Content IDによる自動照合で検出された著作権申し立て(音源・映像素材の一致)
  • AIなりすまし検出(Likeness Detection)経由で提出される、本人の顔や声を無断で加工・生成したとするプライバシー上の申し立て

なお「Claims」という表記自体は今回新設されたものではない。YouTubeの著作権ヘルプ(Android版)では、Studioアプリで動画を選んだ際に「Restrictions」の隣に「Claims」というラベルが表示され、そこから「Review issues」に進む案内が以前から存在する。今回の発表は、この「Claims」という語を動画詳細ページ内のメニュー名としても採用し、対象範囲を広げるものと位置づけられる。また、なりすまし申し立てを受けた動画の詳細ページには、誰が申し立てを行い、誰の類似性が検出されたかが併記されるようになる(申し立てた人物と、類似性が検出された本人が別人のケースがあるための措置)。なお、ロールアウトの具体的な日付や対象国について、公式発表文には明記がなく、現時点では未確認である。

YouTube Studioの著作権関連メニューがClaimsタブに統合される流れを示した図解
分散していた著作権関連のメニューが「Claims」タブに集約される。

そもそも「AIなりすまし(類似性)申し立て」とは何か

YouTube公式ヘルプ「Learn about likeness claims」によると、なりすまし申し立て(likeness claim)は、動画に本人の顔や声と一致する加工・AI生成コンテンツが含まれる場合に付与されるもので、本人またはその代理人が自分の類似性がAIで無断利用されたコンテンツを管理するための仕組みとされている。著作権申し立て(Content IDの仕組みの基本的な考え方は「SNSでの著作権はどこまでOK?違反事例と引用の範囲を解説」でも解説している)とは別物で、なりすまし申し立てが有効と判断されると動画は完全に非公開・視聴不可になり得る。一方で、著作権ストライクやコミュニティガイドライン違反のストライクにはつながらず、チャンネル全体の状態や機能に悪影響を与えることもないとYouTubeは明記している。この仕組みの土台となる「類似性検出(Likeness Detection)」機能自体は2024年後半に一部トップクリエイターを対象にした試験運用として始まり、2025年にYouTubeパートナープログラム参加者へ拡大、2026年5月には18歳以上の対象クリエイター全体に開放されている。YouTubeでは他にも「Ask YouTube」AIチャットボットの米国展開拡大など、AI関連のアップデートが相次いでいる。

異議申し立ての4分類が新設

YouTube公式ヘルプ「Dispute a likeness claim」には、なりすまし申し立てに異議を申し立てられる正当な理由として以下の4つが示されている。

異議の理由内容
本人から許可を得ている対象人物本人から、類似性を使用する明示的な許可を得ている場合。
パロディ、風刺、公共の利益人物や主張を風刺・批評する目的で、加工・合成された類似性を用いている場合。
加工・AI生成されていない実際の本人の映像であり、大幅な編集やAI生成を行っていない場合。
対象人物が動画に登場しない動画に、申し立てられた人物の顔や声がそもそも含まれていない場合。

この4分類は、今回の公式ヘルプ(英語版)で確認できる実際の選択肢名と一致しており、PPC Landの報道が伝える「Explicit Consent」「Parody, Satire, or Public Interest」「Content Not Altered or Made with AI」「Claimed Content Doesn’t Appear」という呼び方と実質的に同一の内容である。異議を送信すると申立人に通知が届き、30日間の回答期間が与えられる。期限内に回答がなければ申立ては失効して自動解除される一方、申立人が異議を拒否して申し立てを維持(reinstate)した場合は、投稿者側はさらに上位のアピール手続きへ進むことができる。逆に異議の正当な理由がないまま乱発的に異議を送ると、動画やチャンネルにペナルティが課される可能性がある点にも注意が必要だ。

著作権申し立て(Content ID)との違い:ストライクと収益化の有無

YouTubeは公式ヘルプで、なりすまし申し立ては著作権ストライクやコミュニティガイドラインストライクを発生させないと明言している。有効な申し立てにより動画が制限・ブロックされることはあっても、チャンネル全体の状態や機能には影響しないという立て付けである。一方でContent IDによる著作権申し立て(YouTube上でのコンテンツ制作と著作権の基本は「YouTubeリミックスとは?コンテンツの作り方と注意点を解説」も参照)では、ブロック、収益化(広告を表示して権利者と収益を共有する)、トラッキングという複数の対応が選べるが、なりすまし申し立てには収益共有の仕組みがない。ブロックされた動画はどちらにとっても収益を生まないという点で、両者の最大の非対称性といえる。また、動画を非公開・限定公開にしてもなりすまし申し立ての対象からは外れないこと、AI生成であるとラベル表示(開示)しても別人の類似性を無断使用していい理由にはならないことも公式ヘルプに明記されている。この2点は、AI生成コンテンツを日常的に扱う企業アカウントにとって見落としやすいポイントである。

【企業アカウント運用者向け】自社コンテンツがAIで無断利用されたときの異議申し立て実務フロー

ここまでは自社の動画がなりすまし申し立てを受けた場合の視点だが、企業アカウントにはもう一つ、逆のケースがある。自社の肖像・発言を無断でAIに学習・合成され、悪質な広告やフェイクニュースの声色に使われるケースである。この場合、企業側は「申し立てられる側」ではなく「申し立てる側」になる。具体的な実務フローは以下の通り。

  1. 自社の類似性を登録する(類似性検出の導入):公式スポークスパーソンや社長・広報担当者など、日常的に顔出しをするメンバーがいるなら、本人同意の上YouTube Studioの「コンテンツ検出」から類似性検出を有効化しておく。 18歳以上でチャンネルのオーナーまたはマネージャー権限を持つ人物が対象で、身分証明書と顔の動画を提出する必要があり、完了まで最大5日ほどかかる。問題が起きてから登録するのでは遅い。
  2. 検出後のレビューで「可能性のある一致」を確認する:検出された動画には本人の実写が含まれることもあるため、必ずしも不正利用とは限らない。先に自社リポストや共演チャンネルが存在しないかを社内確認し、本当に未許諾のAI加工・生成であると判断できたものだけを次のステップへ進める。
  3. プライバシー苦情・なりすまし削除リクエストを選ぶ(自社が申し立てる側の場合):自社のパーソナリティが無断でAI化されていた場合は、YouTube Studioの「検出済み一覧」からレビューし、「なりすまし削除リクエスト」を選択してプライバシー苦情手続きを進める。パロディ・風刺目的と見られる場合は受理されない可能性もあるため、客観的に判断してから進めるのが安全だ。
  4. 他社から申し立てられた場合は証拠を整えてから4分類のどれに当てはまるかを確定させる:自社動画が第三者のなりすまし申し立てを受けた場合、「本人や自社役員からの出演依頼書・同意書」「実写でAI加工をしていないことを示す元データ」を事前にファイル保管しておくと、異議申し立ての際に提出が早い。特にタレント起用やPR契約でアバター・集合写真を使う場合は、契約時に「YouTubeの類似性申し立て対応への協力義務」を入れておくと、後の異議申し立てで30日間を無駄にしないで済む。
  5. 30日間の待ち時間を前提に公開スケジュールを組む:異議は送信後すぐに解決しない。キャンペーン動画やタイアップ公開を伴うコンテンツでは、ブロックリスクを見越して公開日を前倒しに設定しないこと。

今すぐ確認しておきたいチェックリスト

  • YouTube Studioの動画詳細ページで、従来の「Copyright」表示が「Claims」に変わっていないか定期確認する。
  • 自社チャンネルに出演する人物(社員・広報担当者・契約タレント)について、類似性検出の登録対象とするかを社内で判断しておく。
  • 契約書・出演依頼書に「類似性の無断使用を許諾しない旨の文言」と「異議対応の協力義務」を盛り込む。
  • ソーシャル運用担当者向けに、なりすまし申し立てを受けた際の一次対応フロー(上記4分類と提出先)を社内マニュアル化しておく。
  • 非公開・限定公開の動画も申し立ての対象であることを社内で周知する(クライアント確認用の限定公開動画も対象外ではない)。

まとめ

今回の変更は、Content GuidelinesやCommunity Guidelinesなどのポリシー自体は変わらないとされている一方で、著作権とAIなりすましという性質の異なる2つの制限が同じ画面に並ぶことで、編集担当者が見落としやすくなるリスクもある。特になりすまし申し立ては収益化の選択肢がなく、異議を唱えなければ動画がブロックされたままになる可能性がある。自社が「申し立てられる側」にも「申し立てる側」にもなり得ることを前提に、現場の運用手順を今のうちに更新しておきたい。

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出典

  • PPC Land「YouTube adds 4 dispute categories for AI likeness claims that block videos」(2026年8月21日公開、YouTube Help Centerコミュニティフォーラムへの2026年8月19日付発表を引用) – https://ppc.land/youtube-adds-4-dispute-categories-for-ai-likeness-claims-that-block-videos/
  • YouTubeヘルプ「Learn about likeness claims」 – https://support.google.com/youtube/answer/17133929
  • YouTubeヘルプ「Dispute a likeness claim」 – https://support.google.com/youtube/answer/17134332
  • YouTubeヘルプ「Likeness detection on YouTube」 – https://support.google.com/youtube/answer/16440338