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メディアミックスとは、商品・サービスを、テレビやラジオ、インターネットなど複数のメディアを活用して認知を拡大する広告手法のことです。
また、マーケティング用語としてのメディアミックスとは、小説・マンガなどの原作を、アニメ・映画・ゲームなど他の様々なメディアに展開して、収益性の高いコンテンツに成長させることを指します。
様々な媒体に同時多発的に情報を掲載することで、幅広いターゲットにアプローチできるうえ、それぞれのメディア同士で互いに補完・相乗効果も狙うことができます。
しかし、以下のような課題をお持ちではないでしょうか。
「自社の商品やサービスをメディアミックスで認知度を高める方法は?」
「メディアミックスの成功事例を知りたい」
「メディアミックスで失敗しないためにはどうすればいいかわからない」
そこで本記事では、メディアミックスの成功例に見る共通のポイントは何か、また実際にプロモーションに活用する場合の注意点などについて、解説します。
1.メディアミックスとは?
メディアミックスとは、広告用語では、ある商品をテレビ・新聞・ラジオ・インターネットなど複数のメディアを使って宣伝することを指します。
また、マーケティング用語としてのメディアミックスとは、小説・マンガなどのコンテンツがあった場合、アニメ・映画・ゲームなど他の様々なメディアに展開して、収益性の高いコンテンツに成長させることを意味します。
1-1.メディアミックスのルーツ
メディアミックスのルーツとは、その言葉が広く知られるようになった時にさかのぼれるでしょう。
メディアミックスが注目され、その言葉が普及したのは、1970年代後半です。
当時の株式会社角川書店が、自社発行の小説を原作とした映画をヒットさせ、その映画のイメージを新装カバーに反映させることで原作小説の売り上げをさらに伸ばす、といったビジネスモデルを打ち出したのが、大きなきっかけとなりました。
1-1.メディアミックスの使われ方
メディアミックスを行う場合、どういうメディアが想定されるでしょうか。
広告の場合、出稿する媒体としては、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ポスター・DMなどに加えて、近年はインターネットが多く用いられるようになっています。
マーケティングの場合、例えば、小説というコンテンツがあれば、それを原作に、アニメ・映画・ゲームなど様々な媒体を利用して、コンテンツを拡大させていくことが想定されます。
1-3.クロスメディアとの違い
メディアミックスと関連して、クロスメディアという用語もありますが、両者はどう違うのでしょうか。
メディアミックスとは、ある商品の宣伝を、複数の媒体を使って、同時多発的に行うものです。広告の内容は同じで、ある商品の認知度を高めることを目指します。
クロスメディアとは、ある商品の宣伝を、複数の媒体を使って、媒体ごとの特徴に合わせて行うものです。広告の内容は媒体ごとに違い、1つの広告では完結せず補完し合っています。ある商品の魅力を深く伝えることを目指します。
2.メディアミックスの主な媒体4つ
メディアミックスの対象となる媒体は多岐に渡りますが、タイプによっていくつかに大別できます。
今回は、インターネットメデイア・ニッチメディア・デジタルメディア・アナログメディア、の4つに大別し、それぞれ紹介します。
2-1.メディアミックスの媒体1:インターネットメデイア
インターネットメディアとは、インターネット技術を利用したメディアのことで、広告・マーケティングの媒体として、近年重要性が高まっています。
インターネットメディアは、特定の属性のユーザーに絞ってアピールできる「ターゲティング性」と、クリックなどでユーザーがすぐ反応できる「インタラクティブ性」に優れています。
広くインターネットメディアといっても、その中に、Webサイト・ブログ・メルマガ・動画配信など様々なメディアがあり、それぞれについて、広告・マーケティングの手法が開発されています。
2-2.メディアミックスの媒体2:ニッチメディア
ニッチメディアとは、不特定多数を対象とするマスメディアではない媒体のことです。例えば、会員誌・顧客情報誌・フリーペーパーなどが挙げられます。
それぞれのメディアの規模こそ大きくはありませんが、特定の属性のユーザーに絞ってアピールできる、「ターゲティング性」に優れています。
2-3.メディアミックスの媒体3:デジタルメディア
デジタルメディアとは、テレビやラジオのことです。従来から存在するマスメディアであり、不特定多数へのアピール力に優れています。
近年、インターネットの存在感が高まっていますが、社会の中で情報インフラとしての地位が確立していますので、主要なメディアであり続けるでしょう。
2-4.メディアミックスの媒体4:アナログメディア
アナログメディアとは、紙面や対面による従来型のメディアのことです。
新聞や雑誌は、代表的な従来型の紙媒体で、信頼性や権威性に優れています。近年、マスメディアとしての規模は縮小していますが、多くのコンテンツはインターネットメディアにも配信され、新聞社や雑誌社の影響力は高いままです。
ダイレクトメールやテレフォンアポイントメントは、紙面や電話を使った従来型メディアですが、特定の人に働きかける手段として、一定の役割を保っています。
街頭や店頭での宣伝は、対面式の従来型メディアですが、特定地域の中でお店や商品の宣伝をするのであれば、シンプルながら効果的な手段となります。
3.メディアミックスの成功例5つ
次にメディアミックスに成功した事例を5つご紹介します。
メディアミックスはコストがかかる分、費用対効果をしっかりと見極める必要があります。
- ポケットモンスター(株式会社ポケモン)
- 鋼の錬金術師(株式会社スクウェア・エニックス)
- ちはやふる(講談社)
- クラフトボス(サントリーホールディングス株式会社)
- アットホーム株式会社
これらの事例からチェックしていきましょう。
〇ポケットモンスター(株式会社ポケモン)
「ポケットモンスター(ポケモン)」は、日本のコンテンツのなかで、メディアミックスに最も成功した事例です。
キャラクターのメディアミックス総収益のランキングでは、ポケットモンスターが1位となっており、総収益は921億ドル(約10.1兆円)を記録しています。
メディアミックスの戦略としては、ゲーム事業、アニメ・映画事業、カードゲーム事業、ライセンス事業などで、多くのメディアを活用し、多角的にコンテンツを展開してきました。
ポケットモンスターは1996年に発売されたゲームが始まりでしたが、同年にカードゲームを発売、翌年にはアニメ放送を開始するなど、早いスピードで各市場に参入しました。
ゲームそのものの面白さだけではなく、雑誌やテレビなど多くの媒体でプロモーションを展開することで、お菓子やキャラクターグッズなどに商材を展開し、購買意欲をかきたてることに成功した事例と言えます。
〇鋼の錬金術師(株式会社スクウェア・エニックス)
「鋼の錬金術師」の事例は、原作漫画からアニメ、ゲーム、原画展など様々な事業にコンテンツ展開で功奏したものです。
原作の単行本を5巻まで発行したタイミングでテレビアニメ化されました。
2003年に放映する前までの1巻あたりの発行部数は、15万部でしたが、放映と同時に発行していくことで、アニメ放映終了後に150万部まで部数が伸びたのです。
テレビアニメを放映するために、5億円という多額の提供料を払う必要があったものの、アニメ効果による漫画の売上がアップしたため、早い段階で損益分岐点をクリアを達成しました。
なお、ストーリーの展開も緻密に計算されていました。
テレビアニメ化された際には最初は原作通りの展開でしたが、まだ原作に描かれていない部分をアニメオリジナルのストーリーとして細かく入れ込んでいたことがポイントです。
原作とは異なる部分をアニメに入れてはいましたが、世界観を損なうことはなかったため、結果的に新規ファン、原作ファンの双方から人気を博しました。
※参考:メディアミックス成功の鍵を握るものとは?|谷口剛司|note
〇ちはやふる(講談社)
漫画が原作の「ちはやふる」は、実写版映画への展開の成功事例です。
漫画が発行された後の3部作で、それぞれで映画興行収入10億円を達成しました。
出版されている単行本の数が多い漫画の場合、ドラマや映画で実写化する際は、原作のストーリーを簡潔にまとめないといけないため、制作の難易度が高くなりがちです。
しかし、ちはやふるの実写化の場合、前編、後編、完結編の3作品で作られたため、キャラクターの背景や伏線を表現を省かずに公開することに成功しました。
また、完結編では原作に書かれていなかったストーリーを展開したものの、逆に原作のファンから高い評価を受けました。
映画化するにあたって、あらかじめ原作者から先の展開を聞き、それを踏まえて脚本を執筆したことがポイントとなっています。
参考:『ちはやふる-結び-』が大傑作となった8つの理由! | cinemas PLUS
〇クラフトボス(サントリーホールディングス株式会社)
サントリーホールディングスが発売するコーヒー飲料「クラフトボス」は、現代のオフィスワーカーをターゲットにした商品として、メディアミックスで成功しています。
2017年に発売開始以来人気となり、2021年にはシリーズ累計販売本数約30億本を突破したほか、フジサンケイグループ広告大賞において「メディアミックス部門優秀賞」を受賞しました。
広告クリエイティブにおけるポイントのひとつは、社会情勢やオフィスワーカーの働き方の変化を背景に、新しいライフスタイルをイメージできるものとしてしっかりと描きこんでいる点です。
テレビCMでは、新しい働き方を実践しているIT企業を背景に、缶コーヒーにはない角がなく丸みのあるシルエットがポイントのボトル自体が見栄え良くなるよう、細やかなところまで配慮して表現されました。
その印象的なシルエットは、SNSでシェアされることも想定していました。
また、新聞広告では「どこでもワーク」をコンセプトに、これからの新しい働き方に関するメッセージをテキストで掲載。
他の媒体にも同様のメッセージを掲載し、発信しました。
テレビCMが、視覚的な印象や雰囲気を伝えることで商材が持つ価値観や世界観を訴求したのに対し、新聞広告など他メディアでは、社会情勢や世相をベースに知的共感を呼ぶアプローチを採用しています。
メディアの特性を生かしながら、自社商品をどんな人物がどのようなシチュエーションで、どうやって楽しめるのかを具体的に伝えることで、新規・既存双方のユーザーに訴求することができると学べる事例です。
参考:「クラフトボス」の新聞広告「どこでもワーク!by どこでもボス!」 | ブレーンデジタル版
〇アットホーム株式会社
不動産情報サービス「アットホーム株式会社」は、メディアミックスとしてテレビCMとYouTube動画広告を活用し、施策効果の改善に成功しています。
同社では、テレビCMとYouTube動画広告のどちらにも同じコンテンツを流用していましたが、それぞれのメディアの特性の違いに着目し、最適化を行いました。
テレビCM | YouTube動画広告 | |
メディア | 地上波 | Web |
訴求できるユーザー | ・不特定多数の人・興味がないこともある | ・興味を持った人のみ |
テレビCMは不特定多数の人に情報を届けることができる一方、深く商品やサービスを理解してもらうことは難しいです。
一方、YouTube動画広告はテレビCMとは情報のスピード感が違います。
そこでテンポ感をアップし、メッセージもシンプルにすることでWeb媒体に適したクリエイティブに変更しました。
結果、YouTube動画広告接触者による検索数はそれまでの3.2倍に向上させることに成功しました。
既存のクリエイティブをさまざまなメディアに流用するのではなく、企画段階からWeb展開も意識することで、広告効果を高めることができるようになります。
4.メディアミックスに失敗した例2つ
一方、メディアミックスに残念ながら失敗してしまった事例もあります。
一番最初に展開したメディアで失敗したり、さらに手を広げようとして失敗したりといったケースです。
要因のひとつには、原作から変わってしまいユーザー離れが起きてしまったことが考えられます。
具体的に見ていきましょう。
〇ビブリア古書堂の事件手帖(株式会社KADOKAWA)
原作と大きく乖離する設定で失敗してしまったのが「ビブリア古書堂の事件手帖」です。
失敗の要因は、主人公の容姿や、主人公の妹が弟になっている、キャラクターの性格の変更など原作をドラマ仕様に大幅に変更したことが、ファンの期待を大きく裏切ってしまった点でした。
2011年から刊行されている小説が原作の同作品は、2013年にドラマ化されました。
その際、ドラマオリジナルの仕様として登場人物が変更されたことによって原作ファンから批判の声が多く上がってしまい、ヒットにつながりませんでした。
原作自体は累計700万部を記録、スピンオフ作品も出るほどの人気作でしたが、期待するファンが多かった分、批判の嵐になってしまったのです。
〇FINAL FANTASY(株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス)
メディアミックスの失敗例の代表とされるのが「FINAL FANTASY」です。
失敗の要因は、3DのCG制作の経験が少ない人材を確保しつつ、脚本の練り直しなど手探りで進めてしまった結果、制作費が膨大になったことが挙げられます。
また、脚本がゲーム制作側でないこともあり、原作の世界観が映画では表現できていなかったとも考えられます。
「FINAL FANTASY」は、シリーズが15作出ているほどの人気RPGゲームで、2001年にフルCGのSF映画を公開。
ハリウッドスタッフと手を組み、1億3700万ドルをかけて制作したものの、興行収入は全世界で8513万ドルで終わり、アメリカでも日本でも予定より早く公開打ち切りとなってしまいました。
※参考:メディアミックスはスマホ時代では常識!?成功例と失敗例を紹介|ザ・マーケティング
5.メディアミックスで成功するためのポイント4つ
以上を踏まえて、メディアミックスで成功するためのポイントは4つあります。
・カスタマージャーニーを意識してメディア戦略を立てる
・メディアの特性を理解した上で選択する
・各メディアに合わせて訴求方法を変える
・各メディアの担当者同士で連携を行う
順に解説していきます。
〇カスタマージャーニーを意識してメディア戦略を立てる
メディアミックスを成功させるためには、カスタマージャーニーを意識した上で、どんなメディア戦略を立てるのかを考えるのがポイントです。
まず、自社が想定するターゲットが商品やサービスを購入するまでに「どのメディアに接触し、どのようなタイミングで、どのような行動を起こすのか」といった心理や行動を、事前に予測しておきましょう。
その上で、ターゲットに確実にリーチするためのメディアを選びます。
例えば、商品やサービスの認知促進が必要な段階では、イメージや世界観が伝わりやすいメディアを選ぶ必要があります。
比較検討段階では、イメージや概要よりもさらに具体的な使用感がイメージできたり価格がわかったりしやすいメディアを活用する、というふうにです。
ユーザーが期待する情報と、企業側が提供する情報がかけ離れてしまった場合は、商品やサービスの購入には至らず断念することが多いので注意しましょう。
そのためには、ターゲットのプロファイリングが欠かせません。性年代・ライフスタイル・居住エリア・嗜好性・購買行動などなるべく詳細に調査しましょう。
〇メディアの特性を理解した上で選択する
メディアミックスは、多くのメディアを使えば良いというわけではなく、メディアの特性を理解した上で、必要なものを選ぶということが重要です。
訴求したいポイントを明確にした上で、活用するメディアを選びましょう。
種類 | メリット | 主なターゲット | 訴求目的 |
テレビ | ・短期間かつ膨大なリーチ数・ブランドロイヤルティの獲得 | 不特定多数 | 認知度向上 |
新聞 | 社会的信頼を得られやすい | 一般紙や経済紙、専門紙などに合わせた読者層 | 商品・サービス理解促進 |
雑誌 | 特定ターゲットへの効率的なリーチ | 特定ターゲット | 商品・サービス理解促進 |
ラジオ | 比較的低コスト | 不特定多数 | 認知度向上 |
SNS | 早い段階で情報拡散できる | 年齢・性別などセグメント可 | 新商品・サービスPR |
「商品やサービスをまずは知ってほしい」という場合は、まずテレビやラジオから活用していく、あるいはSNSで先行PRしていき、他のメディアを活用してユーザーを巻き込んでいく方法が考えられます。
また「ある程度認知は上がっているので、より購入に近い距離からアプローチをかけたい」という場合には、より深い情報を伝えるメディアとして、新聞や雑誌といったメディアを検討します。
ただし、先ほどお伝えしたとおり、全てのメディアを使うべきというわけではありませんので、注意してください。
〇各メディアに合わせてクリエイティブを変える
メディアミックスにおいて複数のメディアを使う場合は、メディアの中で商品・サービスの世界観や特徴など打ち出したい内容が活かされるよう、広告クリエイティブを最適化する必要があります。
例えば、テレビや動画をアップロードできるSNSの場合は、動きや音声で表現することができますが、雑誌や新聞などのアナログメディアの場合は、静止画とテキストでの表現に限られます。
それぞれのメディアによってできる表現が異なりますので、特性に合ったコンテンツを展開するようにすれば、シナジー効果が期待できます。
例えば「クラフトボス」では、テレビCMで商材のデザインや新時代の感覚を視覚化し、感性に訴えかけるアプローチを行い、新聞広告では世相や時代性に着目したテキストメッセージで、知性に訴えかける手法を取りました。
クリエイティブは全く異なりますが「クラフトボス」の世界観は一貫して変わることなく、ブランドイメージの強化に繋げています。
〇各メディアの担当者同士で連携を行う
メディアミックスの戦略において、メディア間の連携を意識しながらそれぞれの役割を定義することは重要です。
「FINAL FANTASY」では、ゲーム制作者が映画制作に関わっていなかったことが要因のひとつとなり、失敗に終わりました。
逆に、漫画「ちはやふる」の実写映画化は、脚本作りで原作者と連携が取れていたため、オリジナル要素を加えながらも、ファンから高評価を得ることに成功しました。
小説や漫画といったコンテンツをアニメ化する場合のみならず、メディアミックスの際には、優良顧客(原作ファン)の期待を裏切る展開はご法度です。
商品やサービスが持つ世界観や価値観を各メディア間で共有し、一貫したメッセージを届けることが大切です。
6.まとめ
メディアミックスとは、1970年代後半から広く知られるようになった、すでにオーソドックスな広告・マーケティングの手法です。
しかし、近年のインターネットの普及に伴い、メディアミックスの重要性はますます高まっています。今後も、メディアミックスは、インターネットを中心に進化していくでしょう。
とはいえ、その流れによって、インターネットメディアだけが力を持つわけではありません。例えば、出版や放送のメディアは、メディアミックスとしてインターネットをさらに活用することで、より優れたコンテンツを生み出せるでしょう。
どのメディアにとっても、より良い活動のために、上手にメディアミックスを行うことが求められます。
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