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フィールドマーケティングとは、マーケティングのうちとくに販売の現場について考える分野です。日本とアメリカでは仕組みの違いもあり、マーケティングの理論をそのまま活用できない面もあります。そもそもフィールドマーケティングとはどのようなものなのか、似たような職種との違いは何かについて解説していきます。
フィールドマーケティングとは?
フィールドマーケティングという言葉は、日本ではあまりなじみがないかもしれません。また、セールスや営業の役割と線引きが難しいようにも思えます。まずは言葉の定義から見ていきましょう。
セールスの現場で行われるマーケティング
「流通用語辞典」では、フィールドマーケティングを以下のように定義します。
「小売店頭などの、消費者と商品が直接接触する場をフィールドと呼び、ここを重視したマーケティング戦略」
フィールドマーケティングは「インストア・マーケティング」と呼ばれることもあります。インストアは「店内」という意味ですから、どちらにせよ販売(セールス)の現場での課題を解決するためのマーケティングと言えます。
日本では「ラウンダー」という職種が一般的
日本でのフィールドマーケティングを見てみると、「ラウンダー」という職種がその役割を担うと考えられているケースが散見されます。ラウンダーとはメーカー側のセールス担当者のことで、店舗を回って売り場の構成を考えたり、販売戦略について小売店と交渉したりする役割です。
おもにアメリカから出てきた時点では、本来のフィールドマーケティングは単なるラウンダーの役割に留まらない概念でした。大部分のアメリカ企業ではマーケティングの役割が非常に大きく、セールスはマーケティングが決めたことを現場で実行するだけです。そのため、元々のフィールドマーケティングが持つ意味合いは、店頭展開・人員配置などを含むセールスに関する戦略全般のことです。
ほかの役割とはどう違う?
フィールドマーケティングという分野における日米の違いを見てきました。続いてはもう少しほかの職種との違いを確認しておきましょう。
セールス
フィリップ・コトラーの「優れたマーケティングは販売(selling)を不要にする」という言葉は非常に有名です。マーケティングに携わったことのある人なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この言葉から分かるように、アメリカではマーケティングと販売(セールス)は互いに対立する部署だと見なされています。前述したように、とくにマーケティングの力が強い企業ではセールスの裁量がほとんどありません。
また、BtoBの場合メーカーの取引先は小売店です。実際に消費者に向けてセールスを行うのがメーカーにとっての取引先になるわけです。そのため、単に「販売をさせる」というよりは「一緒に戦略を考える」というやり方が必要になってきます。
営業
上記のように考えると思い浮かぶのが営業の存在です。取引先と二人三脚で販売まで持っていくという役割は、日本では長らく営業が担ってきました。
ただしこの営業という役割は日本に特有なもので、アメリカ生まれのマーケティング理論では想定されていないという指摘もあります。
「営業とマーケティングはそりが合わない」という話は珍しくありませんが、そもそもアメリカ生まれのマーケティングには営業について考える材料が少ないのです。
担当者が人脈や信頼を深めていったり、取引先ごとに対応をアレンジしたりといった仕事の仕方は、one to oneマーケティングやダイレクトマーケティングなどがアメリカで盛んに検討されるようになる以前から日本の営業が取り組んできたものです。フィールドマーケティングについて考えるときは、営業がこれまで担ってきた役割にも気を配りつつマーケティング的視点を加えていくことが重要でしょう。
参考:日本における「営業」とMarketing & Sales との関係 | 関西学院大学リポジトリ
フィールドマーケティングの戦略
最後に、フィールドマーケティングの代表的な戦略を紹介します。アレンジの仕方は各商品や売り場によって変わってくるでしょうが、基本的な考え方を知っておきましょう。
ギャップ提案
ギャップ提案とは、消費者の現状を把握した上で「こうあると素晴らしいのではないでしょうか」という理想を提案する手法です。理想と現実のギャップを可視化するということです。
現在市場に出回っている商品・サービスには何らかの欠陥があり、改善できる余地があります。消費者もその不便さを被っているわけですが、それに自覚的ではない場合がほとんどです。その「見えていない困りごと」を探すことができるのはマーケティングならではの仕事ですが、売り場でどう提案していくのかにはさらにフィールドの知識が必要になります。
サプライズ提案
サプライズ提案もある種のギャップを活用して行うマーケティングです。期待して買った商品に何か落ち度があると消費者はがっかりします。一方、あまり期待していなかったものが意外と良かったという「プラスの不一致」が起こったときには強い好感を抱きがちです。このギャップを「サプライズ」として提案するのがサプライズ提案です。
参考:マーケティング概念の進化の理論的考察― オムニチャネル・マーケティングの予見 ― | 高千穂論叢第51巻 第2号
まとめ
セールスや営業と混同しがちなフィールドマーケティングについて解説しました。見てきたようにマーケティングの本場アメリカと日本では企業の体制自体が異なる部分もあります。これまでの良い資産を活用しつつ、自社らしい取り組みができるように工夫してみてください。
参考:マーケティング・コミュニケーション管理の戦略的枠組の提案 : 店頭マーケティング・コミュニケーションの位置づけ | 多摩大学学術情報リポジトリTama蔵
店舗空間における感覚マーケティング | マーケティングジャーナル
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