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ブランディング広告はブランドの価値を高めるなどのメリットがありますが、一方で潜在顧客をターゲットとするため、成果が出るまでに時間がかかるというデメリットがあります。
ブランディング広告は「ブランドをすばやく多くの方に認知してもらいたい」という課題を感じている企業は実施すべきです。
今回の記事ではブランディング広告の意味や役割、ブランディング広告を始めるべき企業の特徴などをまとめたうえで、実際にブランディング広告の始め方から効果検証の方法について解説しています。
1.ブランディング広告とは?
ブランディング広告とは、企業そのものもしくは企業が販売する商品やサービスの認知度向上・ブランド力の向上を目的として出稿される広告のことです。
「ブランド広告」と呼ばれることもあるブランディング広告は、企業のイメージ戦略の一つとして活用されています。
ブランド広告はこれまで、テレビや新聞、雑誌などのマス広告を中心に展開されていましたが、現在ではWeb上に出稿するケースも増えています。
1-1.レスポンス広告との違い
ブランディング広告と混同しやすいものにダイレクトレスポンス広告(レスポンシブ広告)がありますが、両者は異なるものです。
ダイレクトレスポンス広告は、広告を見たユーザーが実際に具体的な行動を起こすことを目的としています。ここでいう具体的な行動とは、商品の購入、資料請求、体験申し込み、問い合わせなどです。
一方のブランディング広告は、企業の商品やサービス、ブランドの認知拡大、イメージ向上を目的としています。
ブランディング広告とダイレクトレスポンス広告では、目的が異なるため、出稿するメディアや出稿方法も異なります。
例えばダイレクトレスポンス広告は、リスティング広告や新聞の折り込み広告などを活用する点が特徴です。
2.ブランディング広告の種類
ブランディング広告には3つの種類があります。
- マス広告
- ディスプレイ広告
- デジタル音声広告
特に、ディスプレイ広告はターゲットを絞って広告を打ち出したい場合に向いています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2-1.マス広告
マス広告とは英語で「Mass」の意味である「大衆」に向けた広告を指します。
大衆に向けた広告なので、大勢の方に観てもらいたいシチュエーションで効果を発揮します。
ブランディングの第一歩としての知名度獲得には効果的でしょう。
例えば、企業宣伝のためのテレビCMや新聞広告がマス広告にあたります。
テレビCMは、視聴者が観ているテレビ番組の間に挿入されるため、視聴率が高い番組ほど多くの方にリーチされるのが特徴です。
テレビCMが流れると、潜在的にインプットされます。その結果、ブランドを意識するようになり、認知にもつながるのです。
しかし、最近はマス広告の利用者は限られています。
以前はブランディングに有効な広告手法として採用されていましたが、広告費用が高額なうえターゲティングが困難といったデメリットが浮き彫りとなったためです。
近年ではマス広告の代わりに、次からご紹介するデジタル上の広告が活用されるケースが多くなりました。
2-2.ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Webサイト上に表示される画像や動画の広告を指します。
バナーで表示される場合が多いため「バナー広告」とも呼ばれます。
ディスプレイ広告は、Webサイトのジャンルや特徴に沿って広告を打ち出せるため、ターゲットを絞りたい場合に最適です。
似たものとして「リスティング広告」が挙げられますが、こちらは検索キーワードを元に表示されるテキスト広告です。
ディスプレイ広告とリスティング広告の大きな違いは、アプローチする層です。
AISCEASモデルでいう「認知・興味関心」までのターゲット層にはディスプレイ広告で訴求します。その後、潜在から見込み客となった層にはリスティング広告で訴求し、購買行動を促進します。
ちなみに、AISCEAS(アイシーズ)とは、カスタマージャーニーを作成するには欠かせない、消費者行動を示すモデルです。
Attention(認知)・Interest(興味関心)・Search(検索)Comparison(比較)・Examination(検討)・Action(行動)・Share(共有)のそれぞれの頭文字をとっています。
過去にはマスメディア主流時代のAIDMA(アイドマ)や、インターネット普及後に生まれたAISAS(アイサス)といったモデルが主流でした。
しかし、現代ではSNSの普及に伴って、消費者に比較や検討の行動が定着したため、その行動を反映したAISECEASが主流となっています。
ディスプレイ広告は、バナーや動画でイメージを訴求するため、そのコンセプトやデザインなどクリエイティブが重要です。
しかし大きさや文言・画像などの情報量が多いため、クリエイティブのどの部分が効いたのかなど、広告の効果測定が難しい側面もあります。
このように、画像広告や動画広告の手直しや改善がしづらい点には注意が必要です。
2-3.デジタル音声広告
デジタル音声広告とはインターネット上で配信される音声広告です。
Spotify等の音楽ストリーミングサービスに広告を打ち出せる特徴があり、若い層にも多くリーチできます。
そのため、若年層向けの商品やサービスを販売しているブランドの認知拡大に大きな効果が期待できるでしょう。
音声広告の一つとしてラジオ音声広告も挙げられます。
最近はスマートフォンでラジオを聞く方も増えてきているため、老若男女問わずリーチできるようになりました。
デジタル音声広告は、スキップできない広告のため、情報を届けやすいと言われています。
しかし、音声のみで企業の価値やブランドイメージを伝える必要があるため、サウンドロゴなど聴く方の印象に残る広告を作成する必要があるのです。
まだ音声広告を打てる媒体自体が少ないのが問題点ですが、音声・音楽サービス市場の拡大に伴い、広告の需要も拡大していくと考えられます。
3.ブランディング広告のメリット
ブランディング広告を利用することで得られるメリットはさまざまです。
ここでは、具体的なメリットを5つ紹介します。
1.ブランドイメージの向上
ブランディング広告一番のメリットと言えるのが、ブランドイメージが向上することです。
ブランディングを意識した広告が多くの人の目に触れることで、ブランドに対する理解が深まり、結果的にポジティブなイメージの醸成につながります。
「●●といえばこの会社」といったイメージを持ってもらえればブランド力も大きく向上しているといえるでしょう。
2.ブランド認知の拡大
ブランディング広告は、ブランドイメージの向上だけでなく、まだブランドを認知していない人にブランドを知ってもらう機会にもなります。
ブランドの認知が拡大すれば、市場でのポジショニングの確立・強化にもつながるでしょう。
3.リピーターの獲得
ブランド力イメージが向上することで、ブランドや商品、サービスに対して愛着を持つ人も増えると考えられるため、結果的に顧客の定着、リピーターの獲得につながります。
リピーターが増えれば、売上もアップし、収益も安定するため、さらなる広告の出稿、新たなマーケティング戦略の実施なども可能となるでしょう。
4.商品単価の向上
ブランドへの愛着が高まった消費者は、その企業の商品やサービスを購入する・利用する頻度も増えると予想されるため、商品単価の向上が期待できます。
場合によっては、高額商品の購入を検討する消費者が出てくることもあるでしょう。
5.集客の効率化
「●●といえばこの会社」と言ったブランドイメージを持ってもらえれば、競合企業に対して優位なポジションを確保できるため、効率よく集客できるようになります。
自社のポジションが確立されれば、宣伝活動や営業にかけるコストを抑えることもできるため、結果的に顧客獲得単価も抑えられる可能性があります。
4.ブランディング広告のデメリット
ブランディング広告にはメリットの一方でデメリットも少なからず存在します。
ここでは、具体的なデメリットを2つ紹介します。
1.すぐには結果が出ない
ブランディングは時間をかけて行うものであり、ブランディング広告を出稿したからといって、すぐに結果が伴うわけではありません。
数年単位で時間がかかるケースもあるため、長い目で見て取り組んで行く必要があります。
また、時間をかけて確立したイメージを変更することは簡単ではありません。
そのため、途中から他にも認知してもらいたいイメージが出てきたとしても、再度ブランディングを行わなければならない点にも注意してください。
2.競合の状況によって成果があげられないことも
すでに競合他社がブランディングを行っており、市場におけるポジションを確立している場合、自社のブランディングを行う難易度が高くなります。
このような状況では、いくら広告費を投じても思ったような成果が挙げられない可能性があるでしょう。
そのため、出稿にあたっては、自社が入り込むことのできる余地があるのかどうか検討しなければなりません。
5.ブランディング広告で使われる効果測定の指標
ブランディング広告は成果を数値化しにくいというデメリットがありますが、効果測定の指標は存在します。ここでは、ブランディング広告の効果測定に使われる2つの指標を解説します。
ブランドリフト調査
ブランドリフトとは、ブランディング広告の効果測定で使用される指標のひとつです。ブランディング広告を見たユーザーと見ていないユーザーを比べることで、見たユーザーのブランド認知度、好意度、メッセージ理解、購買意欲の意識変化を測定します。
ブランドリフト調査では、ユーザーを対象にアンケートを実施し、回答を集計・分析します。オンラインで実施する場合、インバナーサーベイやリードバナーアンケートなどが使用されます。
インバナーサーベイは、動画サイトYouTubeなどでも見かける、ディスプレイ広告上に表示されるアンケートです。質問項目は1?3問程度なため、ユーザーが簡単に回答できる仕組みになっています。
リードバナーアンケートは、Web広告からアンケート専用のWebページにユーザーを誘導し、回答を収集する方法です。インバナーサーベイよりも多くの質問項目が設定可能で、より高い回答精度が見込まれるなどのメリットがあります。
サーチリフト調査
ブランディング広告の効果測定に使われるもう1つの指標が、サーチリフトです。サーチリフトでは、ブランディング広告を見たあとのユーザーの間で、実際にブランド名や商品名などの対象キーワードを自然検索する数がどれほど増えたかを測定します。
ブランドリフト調査とは異なり、アンケートを実施する必要はなく、自然検索のデータをもとにリサーチが可能です。サーチリフトにより、広告接触後に自然検索数がどれほど伸びたのか、どのようなユーザーの検索数が増えたのかなど、検索行動の変化が見える化できます。
6.ブランディング広告でおさえておくべき3つのポイント
ブランディング広告を始める前に最低限おさえておくポイントは以下の3つです。
- ブランドポジションに一貫性を持たせるために準備を入念に行う
- ターゲットに合わせたポジショニングを行う
- ターゲットに合わせた広告媒体を選ぶ
詳しく紹介します。
〇ブランドポジションに一貫性を持たせるために準備を入念に行う
ブランディング広告はブランドポジションに一貫性を持たせるための準備が大切です。
自社でブランドポジションに対する理解がバラバラだとターゲットや訴求にばらつきが出てブランドポジションの確立に時間がかかってしまいます。
ブランディング広告を始める前に以下の準備を行っておきましょう。
〇自社の確立したいポジションを明確にする
社内全体でブランディング広告で目指すべきポジションを共有しておく
自社の独自性を理解する
ブランディング効果を高めるためには「自社はどのポジションでブランディングするか」を明確にし、社内での理解を合わせることが大切です。
ブランディングは「独自性」があることでブランドの個性を強く出し、それを発信していくことで、競合他社との価格競争に巻き込まれない強いブランド力を作り出すことができます。
そのためには、社内全体で「自社のブランディングはこれだ!」と理解できている状態を作りだし、企業の発信に統一性を持たせる必要があります。
〇ターゲットに合わせたポジショニングを行う
ブランディング広告で失敗しないためには、自社のターゲット、あるいは今後顧客にしていきたいターゲットを明確にした上でポジショニングを行う必要があります。
ターゲットに合わせたポジショニングを行わなければ、潜在顧客の多いホットな市場に効率よくブランディングできず、市場での優位性を取りにくくなります。
エナジードリンクの市場で最も知名度の高い「レッドブル」は、ターゲットに合わせたポジショニングを行い、ブランディングの成果を上げた企業です。
同社はリポビタンDのビジネスモデルに惹かれ、栄養ドリンクビジネスに参入しましたが、滋養強壮の効果でブランディングしていません。
若年層をターゲットに「体が疲れているから栄養ドリンクを飲む」のではなく、「気分を上げる」「パフォーマンスを高める」ために栄養ドリンクを飲むという価値を創出。栄養ドリンクではなく、エナジードリンクとしてポジショニングを行いました。
その結果、滋養強壮の効果の面ではリポビタンDの方が効果は高いが、若年層に選ばれる栄養ドリンク・エナジードリンクに選ばれています。
※参考:【1歳刻み!7,000万人の購買商品ランキング】「栄養ドリンク・エナジードリンク」の男女総合ランキング1位「モンスターエナジー」、2位「レッドブル」
ターゲットに合わせたポジショニングをうまく行うためには、ターゲットの理解が必要不可欠です。
〇ターゲットに合わせた広告媒体を選ぶ
ブランディング広告ではターゲットに合わせた広告媒体を選ぶ必要があります。
ターゲットに合った広告媒体を選ばなければ、本来届ける必要のないユーザーに広告が届いてしまい、認知効果が出にくくなってしまいます。
ブランディング広告はWeb広告やマス広告以外にもイベントの協賛で広告枠を購入し、ブランド認知を高める方法もあります。
前述した「レッドブル」では、ターゲットにしている若年層の視聴率が高いスポーツイベントやeSports(ゲームの大会)などの広告枠を買い占めてターゲットに合わせた広告活動を行っています。
「パフォーマンス向上=レッドブル」というブランディング広告を打ち出し、「パフォーマンスを上げるならレッドブルを飲む」という価値を創出し、ブランディングに成功しています。
レッドブルの事例のように、イベントに広告を出稿するだけでなく「10代〜20代をターゲットにするならTikTokやInstagramで広告出稿を行う」「ファミリー層をターゲットにしているならテレビCMを出稿する」など、未来の顧客になりうる、あるいはファンになってほしい顧客に最も多く届けられる広告媒体を選びましょう。
7.ブランディング広告の成功事例
ブランディング広告をうまく活用し、成果を上げた企業の事例を紹介します。紹介する企業の事例は以下の通りです。
- バーミキュラ
- 杉山フルーツ
これらの事例について詳しく解説します。
〇暮らしを変えるをコンセプトに鍋を売り出し、累計50万個以上売り上げたバーミキュラの事例
バーミキュラブランドを運営する「 愛知ドビー株式会社」では、鍋を購入するユーザーのニーズをうまく捉え、「暮らしを変える」をコンセプトに食材の味を最大限に引き出すホーロー加工の鍋を販売し始めました。
結果、1年で15万台、累計で50万個(2019年時点)以上売れる大ヒットを記録しました。
同社は鍋の素材や機能性を多く伝えるのではなく、購入した先の未来を見せるCMの配信、SNSやオウンドメディアなどの発信によるブランディングに成功しています。
※参考:ブランド累計受注台数50万台を突破したバーミキュラ、初のレシピアプリ「MY VERMICULAR」新登場!|愛知ドビー株式会社のプレスリリース
〇業界のポジションを獲得し、1万円以上するメロンを年間7000個以上売り上げる杉山フルーツの事例
静岡県富士市に店舗をおく「杉山フルーツ」では、ほぼ毎朝、果物市場に出かけて自身の目でフルーツの鮮度を確かめて仕入れを行っています。
仕入れた果物を一つ一つ箱から出して最高級の品だけを店頭にならべる商品管理の徹底ぶりが顧客に伝わり、「杉山フルーツで果物を買えば間違いない」というブランディングを形成しました。
これにより、価格競争に巻き込まれず、1万円以上するメロンや1つ350円以上する手作りの「生ゼリー」を販売できています。
杉山フルーツのブランド力を高めるべく、杉山フルーツ代表の「杉山清氏」はテレビ出演や雑誌取材、本の出版等を手広く行っています。
※参考:身の丈にあった経営とこだわりが商品のプレミアム感を生みオンリーワン戦略を実現
8.まとめ
今回は、ブランディング広告の概要やブランディングが求められる理由、メリット・デメリット、具体的な種類などについて解説しました。
モノ消費からコト消費へと変化した現在においては、消費者に自社商品やブランドに対する愛着を持ってもらうことが欠かせません。
そのためにもブランディング広告を通してブランドイメージの向上に努めることが大切です。
ブランディング広告の出稿にあたっては、自社商品やサービスの強みを把握し、長期的な視点を持って取り組む必要があります。
また、具体的なターゲット像をしっかりと作り込むようにしましょう。
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