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最近、「リスキリング」という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか。「個人のスキルアップ」と解釈されることも多いですが、リスキリングは個人ではなく、企業として取り組むべきテーマです。
この記事では、企業の人材育成に関わる方に向けて、リスキリングの概要を解説しながら、よくある誤解を解いていきます。
1.リスキリングとは?
経済産業省の審議会で発表された資料によると、リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」を意味し、最近では、「デジタルの知識を新たにつける」という文脈で使われることが増えています。
出典:『リスキリングとは -DX時代の人材戦略と世界の潮流-2021年2月26日リクルートワークス研究所』)
〇リカレントとの違い
リスキリングと混同されやすい用語として「リカレント」があります。
リカレントは個人主体での学習が基本になりますが、リスキリングはあくまでも企業が主導するもので、企業における職業能力を高めることを目的としています。
〇リスキリングが注目される背景
リスキリングが注目されるようになったきかっけは、2020年の1月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で発表された「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」です。
ダボス会議では、2025年までにDXにより、事務職などでは8,500万人の雇用が失われる一方、IoTやAI(人工知能)などの「第4次産業革命」がけん引するような職種では、9,700万人の雇用が生まれると予測しました。また、この変化に対応したスキルを持った人材を増加させるため、2030年までに10億人への教育を行っていくとも発表しました。
このように、今後デジタル化が加速する世界において、デジタルに関する知識を付けることが非常に重要であるという背景から、リスキリングが注目されています。
2.リスキリングが話題になっている理由
ここからは、国内でリスキリングが話題になっている理由を3つ紹介します。
〇DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が世の中に浸透してきた
DXとは社内のデジタル化を進める取り組みだ。コンピュータやAIなどのデジタルを活用しながら業務を行うことで、業務効率のアップや良質なサービスの提供など、事業運営に良い影響をもたらします。
DXを推進している企業は少なくないものの、現場で実践するにはデジタルやコンピュータに関する知識を習得する必要があります。DX関連の業務に携わったことがない方は、聞き馴染みのないスキルを習得しなければいけません。結果、リスキリングが注目されるようになっったのです。
〇新型コロナウイルスの流行によって働き方が変わった
新型コロナウイルスの流行によって、働き方が変わったケースは多いです。社内で働いていた方がテレワークに変わったり、顧客とのやり取りが対面からオンラインへ移行したり、既存の働き方では対応できないケースも増えています。
それに伴い、新たなスキルを身につけなければならない状況になっています。これもリスキリングが注目されている理由の1つです。
〇様々な場所でリスキリングに関する宣言がされた
たとえば2020年に開催された世界経済(ダボス)会議では「2030年までに地球人口のうち10億人をリスキリングする」と発表されました。さらに経団連でも2020年11月に発表された「新成長戦略」の中で、リスキリングの必要性について触れられています。
このように国内外問わず、リスキリングに関する宣言がされてきたのも注目されるようになったきっかけと言えるでしょう。
3.企業がリスキリングを推進するメリット
企業がリスキリングを推進するメリットを、具体的に紹介します。
〇人材不足に対応できる
三菱総合研究所の推計によると、向こう10年以内に、国内では事務職や生産職に数百万人規模の大幅な余剰が生じる一方、デジタル人材をはじめとした専門・技術職は同程度以上の不足が予測されています。
不足するDX人材を採用といった方法で外部調達しようと思っても、難しい状況となるでしょう。内部人材にリスキリングを行い、必要なスキルを身に着けてもらうことは、企業にとって理に適った選択といえます。
※参考:三菱総合研究所『目指すべきポストコロナ社会への提言』
〇エンゲージメント向上につながる
企業がリスキリングの推進によって、従業員に学びの機会を提供し、キャリア形成の支援をすることは、従業員エンゲージメントの向上につながります。エンゲージメントが上がれば生産性は向上し、業績にも貢献することになるでしょう。
〇自律型人材を育成できる
企業がリスキリングを推進することで、従業員のなかにも自分で新しいスキルを獲得しようという風土が生まれます。自発的に考えられる「自律型人材」が増えることで、イノベーティブな組織に変わるきっかけとなるでしょう。
〇社内の業務に精通した人材に取り組んでもらえる
リスキリングを行った社員は、既存事業に精通しているため、すぐに業務のなかで新しく身に付けたスキルや知識を活かすことができます。同等のスキルや知識を持った外部人材を採用することも方法の1つですが、既存事業の要諦や社内における仕事の進め方等に馴染むまでに時間が掛かります。その点、リスキリングを社内で推進すれば、スムーズに仕事を進めることができるでしょう。
4.企業がリスキリングを進めるための3ステップ
では、実際に企業がリスキリングを進めるためには、どのようなポイントが存在するのでしょうか。ここでは、ブレインパッドの支援事例も参照しつつ、大きく3つのステップに分けて概要を説明します。
4-1.求められるスキルと対象となる社員・組織を定める
リスキリングの仕組みが、自社に求められる人材要件を満たすものでなければ意味がありません。そのためにも、まずリスキリング対象がどんな部署のどんな従業員なのかを定めることが重要です。
例えば三菱UFJ銀行様の場合、グループ行員によるデータ活用の文化が浸透していないという課題に基づき、データ活用・分析に関わる部署・担当者の業務内容をヒアリングし、そこから逆引きする形でデータ分析や統計学の基礎を習得するためのコンテンツを開発しました。現場のデータ活用ニーズをもとに、求められるスキル群と受講ターゲットとなる対象者を明確化することが、成否を分ける鍵の1つです。
4-2.社外の専門組織を活用する
デジタルスキルは、業界や職種などを問わず共通する部分も多く、すべてのリスキリング用コンテンツを社内で開発するのは非効率であると考えられます。社外のコンテンツや専門家を活用したほうが、費用と時間の節約につながりやすいケースもあるのです。
もちろん、社外から講師を招いたりコンテンツを調達したりする場合、それらの選定やコスト、企業文化や業務フローなどの認識合わせなど、利用者側の意図通りに研修が進まないリスクもあります。社外のリソースやサービスを利用するにしても、課題設定や施策への落とし込み、座学のみならず実践力を養うプログラム作りなどさまざまな課題に柔軟かつ迅速に対応してくれる信頼できるパートナー企業選びも非常に重要です。
4-3.社員の声を取り入れつつ継続的に実施する
リスキリングは、一回きりではなく継続して行うことが大切です。リスキリングの必要性を社員に示してモチベーションをかき立てつつ、リスキリングプログラムへのフィードバックをしてもらいながら改善を図っていくことも企業としては必要です。
ブレインパッドのデータ活用人材育成サービスでも、受講後アンケートや人事部の研修担当者へのヒアリングを通じてサービス改善を常に行っています。三菱UFJ銀行様の事例でも、受講後アンケートの要望をもとに、学習理解度や利用ニーズに合わせて、より現場の業務に生かしやすいものに改善を行いました。
5.リスキリングを進める上での注意点
リスキリングを進める際、以下の点に注意をしましょう。
〇取り組みやすい環境をつくる
リスキリングに取り組みやすい制度や仕組みをつくるには、まずは周囲の理解が必要です。なぜリスキリングが必要なのか、社員にしっかり説明をすることで、対象となる受講者への協力体制がうまれます。
リスキリングに取り組む人へのインセンティブを設ける、業務時間内に学ぶ時間をつくる場合などは、より周囲の理解が必要といえるでしょう。全社一丸となって、必要なスキルを獲得できるような環境整備は必須です。
〇社員の自発性を尊重する
特にこれまでまったく違う職種についていた人がリスキリングを行う場合、学習に対する負荷やストレスがかかります。本人のスキルを身に着けたいという意思がなければ成功しません。対象者を設定するときは挙手制にするなど、社員の自発性を尊重しキャリアプランとマッチするようにしましょう。
6.まとめ
リスキリングは様々な国の企業で活用されている。時代の移り変わりが激しい現代では、多くの企業にとって必要なことだと言えるでしょう。リスキリングを取り入れるメリットは以下の通りです。
- 人材不足に対応できる
- エンゲージメント向上につながる
- 自律型人材を育成できる
- 社内の業務に精通した人材に取り組んでもらえる
したがって従業員だけではなく会社全体にとっても、リスキリングに取り組むメリットは大きいです。リスキリングを導入すれば組織に新しい風を吹き込むことにつながるため、業務内容を少しずつ変えていきたい企業に最適といえます。
しかし社内でリスキリングを実施するときは、正しいステップで行わなければ成功させるのは難しいでしょう。成功率を上げたいのであれば以下の5ステップを意識してリスキリングに取り組んでください。
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